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アニメーションを作るという事

 昨日、(2012年11月25日)、枚方に「てれれ」の上映会を見に行ってきた。映像発信てれれ いろいろあってその会場では、観客は私一人だったのだが、上映会主催者の方と上映後話す機会があり、アニメを作る事について話をした。

 どうも世間には誤解があり、アニメーションを作る事は大変な根気がいることだと思われていて、特に、「製作は大変だが、製作が大変なだけ、作品が完成した時の喜びは大きい。」と言う誤解が蔓延しているという事を話した。

「アニメーションは製作する事自体が楽しい。だからやっている。子供がゲームを一日中やっていても、「えらいね、根気あるね。」とだれも誉めない。朝から晩までパチンコやっていても、徹夜で麻雀していても誰も誉めない。アニメーション作りも一緒だ。」と言うと、「どう楽しいのか」と聞かれる。

 「頭に浮かんだイメージを映像化するんだけど、動画をある程度描くと、その動画が動くイメージが浮かんできて、最初のイメージと合体して・・・」みたいな話をしたが、どうもよく分からないらしい。

 この「アニメーションを作る事はそれ自体が楽しい」という事は、個人で作る人だけではなく、会社で作っている人にも共通していると思える。

 10年に一度位、「夢の産業・アニメーション産業の現場はこうだ」というような記事が雑誌に載る。「長時間労働で月収2万円! 苛酷な労働現場」という記事だ。この2万円というのはアニメーターの場合で、製作進行や撮影その他のポジションではもっと普通(といってもテレビの制作下請け会社のレベル)だが。

 これを「けしからん! もっと待遇を改善しろ!」というのは簡単だ。だがもっと簡単なのは、「こんだけやって月2万なら辞めればいい。」という事だ。牛丼屋のアルバイトで一日12時間月25日働いて2万円だったら、みんな辞めるだろう。(時給840円で計算すると、25万2000円もらえる。)昔のAERAの記事だと、「バイトして金を貯め、アニメーターをやり、金がなくなったら又バイトに戻り、また金を貯めてアニメーターをする」若者の話が紹介されていた。「この仕事はいくらやってもストレスがたまらない。」それが仕事か。自分探しの世界旅行みたいだ。

 もっと普通の業界と違うのは、さすがに低賃金・重労働でどんどん辞めていっても、次から次から新人が現れる事だ。雇う側からすると、「低賃金だよ、仕事きついよ、それでも良かったらどうぞ。」と言ってあるんだから、文句を言う方がおかしい。しかも、一定以上の技量が身に付けば食べて行くだけの収入はとれるようになるが、何人入って何人辞めた、というデータは手元にないし、業界でも統計は取っていないだろうが、そこまで生き残るのはほんの少数だ。普通の会社で毎年採用している人間がほぼ全員辞めたらえらい事だが、アニメの会社では普通だ。

 ここで、正直な求人広告を出したアニメ制作会社があり、「当初1年はほぼ無給・ただで仕事が勉強できると思って入社して下さい。」と出して、おおいに話題となった。これでは会社ではなく、職業訓練校のようなものだが、ほとんどのアニメスタジオの実態がこういうものである以上、むしろすべてのスタジオがこういう風に求人した方がいいような気がする。本人も入ってビックリがないだけ幸せだろう。

 今、一時ほどではないが、アニメーター養成学校がいっぱいあり、結構の授業料を取って、1-3年間受講すると卒業させてくれて、就職先を紹介してくれる。アニメスタジオの方では、先に述べたように、「とにかく入れて、仕事させてみる。ダメだったら、本人から辞める。辞めなくても、給料は安いから、会社の経営上問題はない。」という状態なので、「就職率100% !」という事になる。(さすがにまったく絵が描けないと会社に入れないようなので、会社に入れる最低限のレベルまでは教えて卒業させているとは思う。)

 このアニメーター養成学校、大学並みに学費は高い(大学でもそういう学科がある)。授業もそれなりにちゃんとしているのだが、問題は、学校が卒業レベルに達しているとして卒業させていて、就職もちゃんとできるのだが、会社に入ってすぐにちゃんと収入が得られる人がほんの少数である事だ。他の職業ではこんな事はない。ナントカ専門学校を卒業して、就職できれば、ちゃんと給料がもらえる。(就職できなければ、就職率100%にはならない。)

 「本校は、卒業できれば、アニメスタジオに入社して、すぐに、生活できるだけの収入が得られるだけの技術を保証します。ただし、卒業できるのは入学者の10%です。また、一定レベル以下の方は入学できません。入学レベルは大体他校の卒業生と同等です。」というアニメーター養成学校はない。他の業界向けの専門学校のように、卒業後、就職できれば、ある程度の収入が得られる、というアニメーター養成学校はないのである。

 実は、この状況は業界関係者でもよく分かっていて、関係のシンポジウムなどでも、新人アニメーターの労働条件の話を聞いた事がある。だが、「この、誰でも一応入れるシステムを改変する事が本当に必要かどうか」については、「どうかと思う。」との事だった。

 ここが、「アニメーション製作の麻薬的楽しさ」とつながるような気がする。

 今の新人アニメーターの労働条件を改善するため、アニメスタジオは、採用時に、入り口で現在よりもっと厳しく選別して、アニメ業界で生き残れない人間は採用しない。また、アニメーター養成学校も、「プロで食べていけないレベルの人間は卒業させない、また、そのレベルに確実に達しない人間は入学させない。」として、入学選抜・卒業認定を厳格にすれば、今みたいに、月収2万円のアニメーターはいなくなるだろう。

 だが、それでは、この「アニメーションを作る」という楽しい事を経験できる人がほんの少数になってしまう。こいつはここで将来食べて行ける見込みがないからと言って、このアニメーションの仕事をしたい、と眼をきらきら輝かせている若者たちを、門前払いしていいものだろうか。

 また、はじかれてしまう人の中にも、実は才能のある人がいるかもしれない。(こっちが業界側の本音だろう。)

 プロとして、組織の中でアニメーションを作っている人と、個人で作品作っている人は事情が少々違うかもしれない。

 だが、「アニメ作りは面白いんだからしょうがない。」

 さらに、趣味でアニメーションを作ると、大変豊かになります。

 まず、経済的には、仕事でアニメーションをするより、普通の仕事は、断然収入が多い。

 また、精神的には、普通では出会えない人と出会ったり、(変な人もいますが、まあそれはいい事にして)、ビジネスライクでなく、本音で話が出来たりします。

 こんな楽しい事と出会えてよかった。
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プロフィール

かにの社長

Author:かにの社長
1974年頃より自主制作アニメーションを作り続けています。自称「自主アニメの岩田鉄五郎」、最長不倒記録を更新中。

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